唾液のすごい効果!
こんにちは。虎ノ門ヒルズ駅前歯科、歯科衛生士の鈴木です。
今回のコラムでは、唾液の役割について解説いたします。
1.唾液について
常に口の中を潤している唾液について、みなさんは意識したことはありますか?唾液は健康な成人で一日1.0~1.5リットル分泌されると言われています。唾液分泌には、刺激などなくても分泌される安静時唾液と食事などの刺激により分泌される刺激唾液があり、常に口腔内を湿潤しています。
唾液は、自分の意思で調整することができません。無意識で、自律神経の「交感神経」と「副交感神経」がコントロールしています。
ストレスがない時(=副交感神経がはたらいている時))は、サラサラした唾液が耳下腺から分泌されます。
ストレスがある時(=交感神経がはたらいている時)は、ネバネバの粘稠性の高い(水分の少ない)唾液がおもに舌下腺から分泌されます。
緊張したときに口が渇いたり、口臭を感じたりした経験はありませんか?これは、交感神経の働きで、唾液の粘調度が上がり、潤いを感じにくくなったためなのです。また、おうちでゆったりテレビを見ているときに涎が垂れそうになったときには、副交感神経が優位になっているこということになります。
2.唾液ってどこからでるの?
無意識下で出てくる唾液はどこからででいるのでしょうか?
唾液は、唾液腺(だえきせん)と呼ばれる器官で作られ、そこから細い管を通り、お口の中の粘膜からにじみ出てくるのです。唾液腺は1ヵ所ではなく、お口の中のいろいろなところにあります。出る場所によって、サラサラだったりネバネバだったりするのです。
大唾液腺・・・ほとんどの唾液はここから分泌されます。
①耳下腺(じかせん)
上の奥歯の頬側からサラサラした唾液を出します。
②顎下腺(がっかせん)
顎の下にあり、サラサラとネバネバの唾液を出す混合腺です。
③舌下腺(ぜっかせん)
舌の下にあり、サラサラとネバネバの唾液を出す混合腺です。
小唾液腺・・・分泌量は少ないですが歯と歯肉以外の粘膜のいたるところにも小さな唾液腺が存在しています。
3.唾液の役割
唾液にはなくてはならない役割がたくさんあります。
①自浄作用
お口の中の汚れを洗い流す作用のことです。これがないと、細菌が繁殖して虫歯や歯周病になりやすくなったり口臭がきつくなったりします。
②抗菌作用
唾液に含まれている成分は、殺菌・抗菌作用を持ちます。
「リゾチーム」外から侵入してくる細菌を防ぎます。
「ムチン」(唾液の中のネバネバ物質)菌を凝集させ、「菌塊」として口の内から排出するはたらきをしています。
「ラクトフェリン」「ペルオキシターゼ」「IgA」などの、殺菌物質も含んでいます。
③食塊(しょくかい)を形成する
唾液がないと、食べ物はパサパサでまとまりがなく、飲み込むことが難しくなります。
飲み込みやすく塊にするためには、唾液の中の「ムチン」の成分を利用し、唾液と食べ物を混ぜて1つの湿ったカタマリである「食塊」にして、飲み込みやすくしています。
摂食・嚥下とは、食べ物を目で確認して、噛んで形を整えて、舌でのどへ送り、のどから食道へ、食道から胃へ送る一連の作業を指します。 その際、唾液は大事な役割を果たします。 食塊を胃まで無事に送り届けるのも、唾液の大事な役割です。
④湿潤・保護作用
歯や食べ物が、舌や粘膜と摩擦でこすれて痛くならないのは、唾液の「ムチン」が潤し、保護してくれているからなのです。
⑤消化作用
「アミラーゼ」という酵素が炭水化物を分解して、消化を助けます。
⑥味覚を感じる
⑦中和作用・緩衝作用
通常の口腔内はph6.8~7.0で中性を保っています。糖分を摂取するとphは酸性に傾き、ph5.5以下で歯のミネラルはとけてしまいます。
phが酸性に傾いた環境を中和させる機能のことをph緩衝作用といいます。緩衝作用の働きをする唾液中の成分が重炭酸塩やリン酸塩です。これらは酸を中和しphを一定に保ち細菌の発生する酸や酸性食品から歯の溶解を防いでいます。
⑧再石灰化作用
歯の成分はカルシウムが多いので、酸に対して弱く、酸性の状態が長く続くと歯の成分が溶け出し虫歯の原因となります。唾液には脱灰した歯にミネラルを補充し、再石灰化を行う機能があります。初期虫歯の段階なら、再石灰化させることで進行を抑制することもあります。
⑨ 老化防止
成長ホルモン「パロチン」が筋肉や骨、歯などの発育を促進させます。
上記以外にも、唾液の役割や効果があります。唾液の重要さは伝わりましたか?
しかし唾液の分泌量は個人差も多く、季節・年齢・性別・身体状況・服用薬剤などによって変動します。また、睡眠時にはほぼ分泌されません。
4.唾液が出にくくなる主な要因
①全身性の疾患
シェーグレン症候群
更年期障害
糖尿病
脳血管障害 など
②心理的要因
ストレスや精神的な緊張によって自律神経のバランスが崩れ、唾液の分泌量が少なくなることがあります。
③加齢
④頭頸部への放射線照射や手術
⑤口腔内の疾患
唾液腺炎
唾石症 など
⑥全身状態
脱水、貧血、冷え、発熱などによって唾液が出にくくなることがあります。
⑦薬の副作用
薬の一部には唾液分泌を抑えるものがあります。
・睡眠薬・高血圧治療薬・抗うつ薬・パーキンソン病治療薬・抗てんかん薬
・抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)・潰瘍治療薬・過活動膀胱治療薬 など
唾液が少なくなると、話しづらさを感じたり、食べ物がのみこみづらく感じたり、口臭やむし歯、歯周病のリスクが上がってしまったり、さまざまな影響を及ぼします。
5.唾液の分泌を促すもの
①味覚・嗅覚の刺激
②咀嚼や口の運動・唾液腺マッサージによる刺激
よく噛んだり口の周りを動かしたりすることで、唾液腺や口の筋肉に刺激が伝わり、唾液が出やすくなります。
③唾液分泌を促す薬(処方薬)
シェーグレン症候群などの一部の疾患に限られますが、唾液の分泌を促すことにより口腔乾燥症状を改善する薬があります。
6、唾液の質を知ろう
ご自身の唾液の量や質を知ることで、将来起こりうるむし歯や歯周病を予測する事ができます。
当院では、SMT唾液検査で唾液の質を調べることができます。
・SMT唾液検査で測定できる項目
①「むし歯菌」
むし歯菌が多いと、歯の表面に歯垢が付着しやすく、歯の健康を損なうことが知られています。
②「酸性度」
唾液の酸性度が高いと、お口の環境は酸性になり、歯の表面が溶解(脱灰)しやすいことが知られています。
③「緩衝能」
むし歯菌や食物由来の酸を中和する機能の働き具合を調べます。
④「白血球」
歯と歯ぐきの間で細菌や異物が増加すると、生体の防御作用により唾液中の白血球が増加することが知られています。
⑤「タンパク質」
口腔内細菌や、歯と歯ぐきの間にあるバイオフィルムの影響により、唾液中のタンパク質が多くなることが知られています。
⑥「アンモニア」
口腔内の細菌総数が多いと、唾液中のアンモニアが多くなることが知られており、口臭等の原因になるといわれています。
・検査の2時間前から食事・歯ブラシをお控えいただき、来院後、唾液を採取いたします。診療後には測定結果をお伝えすることができます。
当院では、SMT検査を行った患者様に、唾液の質に合わせたセルフケアを提案しています。
推奨する口腔清掃器具や歯磨き粉、洗口剤、食習慣など、生活習慣に合わせて提案させていただきます。
◎まとめ
唾液は私たちの口の中で非常に重要な役割を果たしています。
食物の消化、口の健康維持、会話と快適な食事、免疫機能、歯の再石灰化など、挙げきれない程の役割があります。総じて、唾液は口内環境を維持し、口腔全体の健康に欠かせません。適切な唾液の量と質は、口腔健康を維持します。また、足りない部分は、セルフケアで補うことも十分可能です。まずは、ご自身の唾液について知ってみてください。私たち虎ノ門ヒルズ駅前歯科のスタッフが、患者様ひとりひとりのお口の健康維持をサポートします。