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インプラント後にトラブルが起こる原因って?

こんにちは。歯科医師の戸澤です。インプラントは失った歯に代わる人工歯根としてとても魅力的な治療です。インプラントを埋め込んでから人工歯(被せ物)が装着されるまでの生存率は98.5%、人工歯が入ってから10年の累積生存率は94%に上ります。インプラントは安全性も高い治療法ですが、100%成功する、安全であると言い切ることはできません。安全な治療を実現するために必要な正しい処置が行われなければ、インプラントの埋め込み後にトラブルが起りやすくなります。今回は、インプラント後にトラブルが起こる原因について詳しくご紹介します。

インプラントのトラブルにつながる原因
1、ドリルの摩擦熱によるオーバーヒート
2、埋め込む位置、角度が不適切
3、インプラント周囲炎
4、歯ぎしりなどによる強い力
5、全身的な既往のある方
6、喫煙などにより手術後の治癒を阻害
7、口腔衛生状態の不良

1、ドリルの摩擦熱によるオーバーヒート

1、ドリルの摩擦熱によるオーバーヒート

インプラントを埋め込む1次手術では、専用のドリルを用いて骨に少しずつ穴をあけます。ドリルを使用するドリリングという作業は、基本的に注水下で水を出しながら熱を下げるように行なっていきますが、ドリリングによって発生する摩擦熱によってオーバーヒートが起こりやすくなります。オーバーヒートによって骨が火傷を負ったような状態になってしまうため、インプラントと骨がうまく結合しないことがあるのです。

2、埋め込む位置、角度が不適切

インプラント治療の安全性の一つに、インプラント治療の流れでもご説明した治療計画の立案というとても重要なプロセスがあります。ここではレントゲンやC Tデータをもとに、失った歯の骨の状態を精査します。CTスキャンにより骨の幅、高さなど計測し、どこにインプラントを埋め込むか、どの種類のインプラントを使用するかを決め、インプラントを埋め込む位置をより正確に計画することが可能となりました。しかし、シミュレーション通りに埋め込まれないと、人工歯を装着した後の噛み合わせが悪くなることで、インプラントに無理な力がかかってしまう、インプラントが骨を突き破ってしまうなどのトラブルが起こる可能性があります。

3、インプラント周囲炎

3、インプラント周囲炎

インプラント周囲炎は、インプラント治療後に発生する歯周疾患の一つです。インプラントは人工歯根のため、虫歯になることはありません。しかし、天然の歯と同じように歯周病に罹患することはあります。インプラント周囲炎は、インプラント周囲の組織に炎症が生じる状態です。初期は歯肉の炎症から始まります。これは「インプラント周囲粘膜炎」という状態です。さらにインプラント周囲粘膜炎が治療されないと炎症がインプラントの周りに形成された骨組織に影響を及ぼし、インプラント周囲炎になります。つまり、インプラントの結合した骨がどんどん溶けてしまう状態です。ところが天然の歯に起こる歯周炎は適切な治療を施せばそれ以上の炎症を抑制し、進行しないようにコントロールすることも可能ですが、インプラント周囲炎は一度炎症が起こってしまう(インプラントの周囲に炎症、感染が及んでしまう)とインプラントの表面の特殊な形状により、感染源を取り除くことが難しく、進行を食い止めることがかなり難しくなります。そのため、セルフケアや定期的なチェックとメインテナンスが必要です。

4、歯ぎしりなどによる強い力

4、歯ぎしりなどによる強い力

「歯ぎしり」や「食いしばり」という言葉を耳にされた方、あるいはご自身が歯科医院で指摘されたことがある方もいらっしゃるかもしれません。食いしばりは、無意識のうちに歯を強く噛みしめてしまう癖、歯ぎしりは夜間就寝中に歯をぎりぎりと接触させる癖のことです。歯ぎしりや食いしばりによるお口の中や口腔顔面と言われる噛む筋肉の痛み、顎関節症状など様々な関連症状が出ることがあります。歯ぎしり食いしばりにより天然の歯がすり減ってしまう、歯の根が割れてしまうなどのトラブルが起きますが、インプラントにも影響を及ぼします。特にインプラント体を埋め込んだ初期に強い力がかかってしまうとインプラントと骨の結合が得られず早期に脱落してしまう可能性があります。また、一度しっかりと骨と結合しても強い力が長期間にわたって続いてしまうとインプラント周囲の骨を喪失することがあります。インプラント治療前に歯ぎしりや食いしばりなどの癖がある場合は、特に夜間の力のコントロールをするために歯ぎしり用のマウスピースを装着することや筋肉をほぐすなどの処置が必要です。また、定期的にインプラントにかかる力に問題がないか歯科医院で検診する必要があります。

5、全身的な既往がある方

インプラント治療は外科的な手術が必要なため、全身的な既往がある方は事前に歯科医師としっかりと治療の計画を立てる必要があります。全身的な既往として特に我々歯科医師が注意する例をいくつかご紹介します。まずは糖尿病です。糖尿病の患者さまは免疫力の低下が認められるため感染のリスクが上がり、インプラントと骨がうまく結合しない可能性があります。骨粗鬆症などの骨代謝障害のある患者さまは、インプラントと骨の結合が難しくなる可能性があります。免疫抑制薬を服用されている患者さまは感染症に対する免疫が低下し、インプラント治療後の感染リスクが増加する可能性があります。そして循環器系の疾患のある患者さまです。高血圧や血液サラサラの抗凝固薬を服用されている方は、インプラント手術中や手術後の血が止まりにくいなどのトラブルが起こりやすくなります。ここまでいくつかの例をご紹介しましたが、全身的な既往があるから絶対にインプラント治療が受けられないわけではありません。歯科医師とかかりつけの医師に相談し、コントロールがしっかりとされている患者さまは注意深く治療計画を立てることで治療が可能です。

6、喫煙などにより手術後の治癒が阻害

6、喫煙などにより手術後の治癒が阻害

タバコを吸われている患者さま、特に1日の吸っている本数がかなり多い方はインプラント治療においても注意が必要です。タバコに含まれるニコチンが体内に吸収されると、白血球の働きが弱くなり、細菌感染のリスクが高まります。また、ニコチンにより血管が収縮することで、インプラントの埋め込み部分に血液や酸素が十分に行き渡らなくなること、喫煙の際に発生する一酸化炭素によって酸素の運搬が妨げられると、術後の治癒不全につながります。また、インプラントだけでなく、喫煙が原因で血流が悪くなることから必然的に唾液量も減少し、唾液によってお口の中をきれいにしてくれる作用が抑制され、最終的にインプラント周囲炎のリスクが高まってしまう可能性があります。

7、口腔衛生状態の不良

最初にもお話ししたように、インプラントの治療成績は98%と言われており、安全性も成功率も高い治療です。その予後に大きく影響するのが口腔衛生状態です。インプラントは虫歯になることはありませんが、歯についた食べかすが残っている状態が長く続いたり、日々の歯ブラシなどのケアでの磨き残しにより、細菌の塊であるプラークがインプラントの人工歯根の周囲に波及することで歯茎や骨が炎症を起こし、インプラント周囲炎になってしまうとインプラントを失ってしまうことがあります。天然の歯と違い、インプラントには神経がありません。炎症が進んでも自覚症状が初期では出にくいため、具体的な症状が出たときにはインプラントを維持するのことが難しくなることもあります。天然の歯でも定期的な検診とメインテナンスが必要ですが、インプラント治療前、治療後も口腔内の環境が良い状態であることがインプラント治療の成功の秘訣です。歯科医師や歯科衛生士にインプラントの適切な清掃指導などを受けること、専門的なクリーニングを受けることが必要です。

まとめ

今回は、インプラント後にトラブルが起こる原因についてご紹介しました。インプラントは決して危険な治療ではありません。インプラント手術においてはCTや術前シミュレーションにより的確なインプラントの埋め込む位置を決定するほか、経験、技術力のある術者が行うことによりその成功率も一段とアップします。また、歯ぎしりや食いしばりの強い力に対しては、就寝時にマウスピースを装着する、日中に歯を接触させないような意識付けを行うことでリスクを回避できます。喫煙についても一番は禁煙をしていただくことですが、それが難しい場合は歯科医師の指示のもと一定期間だけでも禁煙に取り組むことができるといいですね。全身的な既往をお持ちの方も、定期的に検査を受けてコントロールされていればインプラント治療は可能です。インプラント治療が終わったらそれで終わりではなく、定期的に歯肉の腫れや出血がないか、インプラント周囲の骨の状態を確認することが必要です。また、口腔内の清掃状態を把握し、ご自身でのセルフケア、専門的なケアを行なってください。インプラントのトラブルが心配な方、これからインプラントを考えている方もお気軽にご相談ください。

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