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TRANOMON HILLS Station
Front Dental Clinic

歯の神経を残す方法って?

みなさんこんにちは。歯科医師の滝口です。
前回のコラムで歯の神経は残すべきか抜くべきかという題材でお話させていただきました。歯の神経は歯のトラブルを感知してくれる機能や歯に栄養を届けるという大事な役割があります。歯の神経には血管も含まれていて、血液も循環しているため栄養が供給され免疫機能が維持されているのです。歯の自然な白さや硬さも神経の働きにより維持されていることは前回のコラムでもお話しました。虫歯が深いところまで進行しているので「歯の神経を抜く処置をしないといけません」という方も、本当に神経を取らないといけない状態なのか、他に神経を残せる方法はないのかを知っていただければと思います。今回は、出来るだけ神経を残したいという患者さまのご希望に添えるように、歯科医院ではどのような検査を行い、どのような治療の選択肢があるのかをご紹介します。

目次
1. 歯の神経が健康かどうかはどうしたらわかるの?
1.1 歯髄電気診って何?
2. 歯の神経を残す治療
2.1 保険診療で深い虫歯を治療する方法
2.2 MTAセメントを使用した歯髄保存療法
2.3 MTAセメントってどんな薬剤?
2.3 歯髄保存療法の適応・メリット・デメリット
3. 料金表

歯の神経が健康かどうかはどうしたらわかるの?

歯の神経が健康かどうかはどうしたらわかるの?

歯の神経の健康状態を確認する方法はレントゲンだけではありません。経験のない方もいらっしゃると思いますが、神経は生きているか死んでしまっているかという判断を当院では2種類の検査法で行なっています。

歯髄電気診
弱い電流を歯に通電させて電気的な刺激を与え、神経を刺激することで痛みや違和感を誘発させて調べる方法です。神経が生きていると電気を流していくと痛みや違和感を感じます。その時点での電気の数値を記録しておきます。診断の精度は高く、神経にも損傷を与えないことがメリットですが、あくまでも神経の生死を判断するため、正常であるかなどまではわかりません。痛み止めや精神安定剤を服用されていると反応しなくなってしまうこともあります。また、電気診は心臓ペースメーカーを装着している患者さまには使用できません。

温度診
温度診という検査には温熱診と冷温診の2種類があります。当院では積極的に温熱診は行なっていませんが、神経の炎症が悪化していく段階で、温熱刺激で痛みが増悪され、冷刺激で痛みが緩和するという特徴があるため、必要に応じて熱い専用の器具を歯に接触させて痛みを誘発させます。
冷温診は、パルパーというものを使うことが多いです。パルパーはプロパンとブタンの混合ガスで、3㎝離すと-30℃になります。このパルパーをスポンジに吹き付けて氷のように冷やされたスポンジを歯に当てて痛みがあるかどうかを確認します。
電気診も温度診も両方行うとより正確な診断ができると言われています。また、歯をぶつけてしまったという方で一時的に神経の反応が鈍くなってしまうこともあります。外傷などで神経が鈍くなっている場合は待機的診断といい、時間を置いて再度検査を行うなど複数回に分けて検査を行うこともあります。

歯の神経を残す治療

歯の神経を残す治療

歯の神経を残す治療は虫歯の深さや治療をする時点での痛みの度合いなどにもより総合的に判断し慎重に行います。前回からお話しているように神経は歯に栄養を届けて歯の白さや機能を維持してくれているのです。できることは行なっていきたいですよね。

保険診療で深い虫歯を治療する方法
① 痛みのある虫歯
患者さまにより痛みの度合いも違い、痛みを感じている期間も違いますが、すでにズキズキするような痛みが出てしまっている場合は神経まで虫歯の感染が進んでいると考えられるため虫歯を取り除き神経が見えてしまっている場合は神経を除去する可能性が高くなります。痛みが持続的ではなく、冷たいものの刺激だけで誘発される場合は虫歯を取り除き神経の近いところにセメントを充填し一度治療を終了します。1ヶ月後を目安に痛みが生じないかを確認し痛みが出てしまった場合は、神経を除去する治療に、痛みがなければ、詰め物や被せ物の治療を行います。
②痛みを感じない慢性的な虫歯
虫歯が徐々に進行し、自覚症状がなく神経の近くまで虫歯が到達してしまっていることがあります。この際に前述した神経の生死を事前に測ることがあります。神経が生きている場合は出来るだけ神経を残せるように虫歯を取り除きます。神経が死んでしまっている場合、一度死んでしまった神経は再生することはないためすでに感染している神経を除去する(根管治療)必要があります。

MTAセメントを使用した歯髄保存療法

MTAセメントを使用した歯髄保存療法

MTAセメントというのは歯髄温存療法という神経を残す治療に使用されるセメントです。虫歯の治療で歯の神経が近いとき、露出してしまった時、神経を残す治療を「歯髄保存療法」と言います。これは、虫歯を除去し神経が近い、露出している場合でも、MTAセメントという材料を使用し、神経の保護、保存を行い神経を残すことのできる治療法です。
虫歯を取り切った後にMTAセメントを置き、さらに硬い封鎖性のあるセメントで保護し1〜3ヶ月ほど経過を見ます。

MTAセメントってどんな薬剤?

MTAセメントってどんな薬剤?

MTAセメントは、1998年から欧米で使用されるようになり、2007年から日本でも厚生労働省によって薬事承認を受け、多数の症例に使用されており、高い臨床評価が報告されています。ケイ酸カルシウムを主成分とする材料で、これまでの主な材料であった水酸化カルシウムに比べて、生体親和性や封鎖性、抗菌性などに優れた材料です。もう少し具体的にご説明すると、高い殺菌力があり、従来のセメントと違い多くの細菌を死滅させることのできる強アルカリ性です。歯髄や神経の入っている根管内を持続的に殺菌してくれます。MTAセメントは固まりながら膨張するという性質を持っていて密封性の高さもその特徴です。また、生体親和性(体内を異物として反応せずに身体との親和性が高い)においてもMTAセメントは生体親和性が高いといわれます。また、カルシウムを主成分としているため、カルシウムイオンを放出することで歯の再生を促進する作用があります、悪いところだけでなく、周りの組織の再生も促してくれる作用があります。
通常はMTAセメントを用いて直接覆髄法を行なったあとは痛みなどが出ないかを確認し、1〜3ヶ月ほどで詰め物や被せ物を行います。

MTAセメントを用いた歯髄保存療法の適応とメリット・デメリット

どのようなケースが適応になるのか
▫️神経が生きている
▫️神経に近い深い虫歯
▫️ズキズキするなど持続的な痛みがないこと
▫️神経をとらないといけないと言われたが痛みがないとき
このように神経に感染が波及していなく炎症が起こっていないことが適応条件になります。つまり、適応外になってしまう歯はすでにズキズキと痛んでしまっている、あるいはすでに神経が死んでしまっている状態は残すことが難しくなります。

メリット
▫️虫歯が深く神経に近いという状態でも神経を残すことができる可能性がある
▫️神経が残っているので歯をより長持ちさせることができる
▫️結果的に歯の削除量が減らせる

デメリット
▫️痛みなどが出ている場合は適用にならないことがある
▫️治療直後に痛む可能性がある
▫️治療後(期間は個人差があり)に痛みが出て抜髄になる可能性もある
▫️保健適用外になるため保険治療に比較して費用が高額になる

料金

MTAセメント治療 35,000円(一般歯科医師が行う場合)
MTAセメント治療 50,000円(専門担当医が行う場合)

▫️経過を確認後、保険適用外の被せ物を装着する(厚生労働省令に基づき、保険診療の材質は適応になりません)
▫️保険適用外の被せ物の費用は料金表をご参考ください。詳しくは担当歯科医師にお尋ねください

まとめ

今回は神経を残すための治療法、歯髄保存療法について解説しました。深い虫歯を治療する際には患者さまご自身が状況を担当の歯科医師からしっかりと説明を受けていただき納得いただいた上で治療を進められることをお勧めします。虫歯治療をしてみたら神経が近かったので抜髄になってしまったなどという経験がある方も多いと思いますが、神経が残せることも十分に可能性があります。MTAセメントは残念ながら保健適用になりませんがその効能やそれに伴うメリット、デメリットもご理解していただいた上で治療を選択されてください。虫歯治療、神経の治療でお悩みの方、どうぞお気軽にご相談ください。

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