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歯周病ってどんな病気?

こんにちは。歯科医師の帆足です。歯周病は「口腔の健康と全身の健康」と深く関係しており、科学的にも実証されています。また、歯周病はあらゆる全身の病気を引き起こすだけでなく、病気を悪化させることも解明されてきています。例えば、心臓病や脳卒中、肺炎などの病気を引き起こす場合もあるのです。口の中なのにどうして?と思われますよね。それは、お口の中に発生した「悪性の微生物」や、歯周病の炎症で発生した成分が唾液や血液と共に全身の臓器に運ばれてしまうからです。それ以外にも糖尿病のコントロールに悪影響を与えたり、早産や低体重児出産の原因となる可能性もあります。近年では、認知症、骨粗鬆症、癌と歯周病の関係についての研究報告を多く見られるようになりました。今回は歯周病ってどんなものなのか、何が原因で起きているのかをみなさんに出来るだけわかりやすくご紹介できたらと思います。

1、歯周病のいろいろ

1、歯周病のいろいろ

歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯の周りの歯茎が炎症を起こしたり、歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。歯周病と言われる病気には3つの代表的な所見が見られます。その3つの所見は①歯肉炎②歯周炎③歯肉退縮(歯茎下り)です。歯肉炎と歯周炎って何が違うのかご存じですか?歯肉炎は歯茎の炎症によって出血や腫れがあるが、レントゲンや歯茎と歯の間を検査するポケット検査などで、歯を支えている骨が溶けていない状態のことを言います。歯肉炎ではしっかりとケアをしてあげることで元の健康な歯茎に戻すことができます。これに対して、歯周炎は骨が溶けてしまっているためにポケットも深くなり、元の健康な歯茎の状態には戻りにくく、治療としてはこれ以上進行しないようにすることがメインになります。
以前歯周病と診断されたことがあるが、自分がどのくらい悪いのか、軽度なのか重症なのかをご存知の方は少ないと思います。歯周病は現在歯周病学会などの学会ベースになるとステージ(重症度による分類)やグレード(進行度合いで分類)で診断されるようになっています。わかりやすく説明すると、ステージは現時点での病気の進行程度を評価し、グレードは病気の進行速度(悪化のリスク)を表しています。我々歯科医師や歯科衛生士が患者さまの歯周病を診断するためには必要な分類ですが、患者さまにはわかりにくいため、下記のような分類でご説明することが多いです。

2、 歯肉炎や歯周病の原因、進行させてしまう因子って?

●細菌因子

●細菌因子

歯周病の主原因はデンタルプラーク(歯垢)です。歯垢には細菌がたくさん存在しています。その中の歯周病原細菌が多い方は歯周病に罹患する確率が高いことや進行が早いなど細菌が歯周病を進行させてしまう毒素を出すことで歯周組織を破壊します。特に、レッドコンプレックス(重度の歯周病に影響していると言われる三大歯周病菌)と言われるP.g菌(P.gingivalis)、T.d菌(T.denticola)T.f菌(T.forsythia)がお口の中に存在すると1年で1.5ミリ以上のスピードで骨を溶かしてしまうということが既にわかっています。歯周病を引き起こす原因となる細菌がいるかどうかを細菌検査によって調べることでどのような歯周病なのかを知ることが大切です。

●宿主因子

●宿主因子

歯周病は細菌が存在することで引き起こされますが、歯周病を進行させる因子についても調べる必要があります。皆さんのお口の中には、健康な状態でも細菌が存在しています。人の体には細菌の活動に抵抗する力があり、歯周組織にも、白血球、マクロファージ、リンパ球などが細菌と戦う免疫という働きをします。その働きに影響する年齢、全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常)、薬の長期服用、そして免疫機能の異常などによって歯周病を悪化させてしまう要因となります。特に糖尿病と歯周病は相互に影響し合うことがわかっています。歯周病に罹患していると血糖値のコントロールが悪化する傾向があり、逆に糖尿病を患っていると歯周病のリスクが増加する可能性があります。また、慢性的な炎症性疾患である歯周病によってお口の中の炎症が引き起こされ、体全体の炎症反応につながり合併症のリスクを増大させてしまうことが知られています。また、噛み合わせ不良、歯列不正、不適合な詰め物被せ物も歯周病のリスク因子となります。特に歯列不正は日本人に多い歯周病の誘発因子となります。歯並びが悪いと歯垢が溜まりやすくなりセルフケアがうまくできなくなるためです。また、歯と詰め物の隙間がピッタリとしていない不適合な状態により歯垢が溜まりやすくなり歯周病を誘発、悪化させてしまうことがあります。噛み合わせの不良や食いしばり、歯ぎしりなどは骨が吸収して弱っている歯にさらに歯にダメージを加えてしまうため歯周病のリスク因子となります。

●環境因子

●環境因子

喫煙、ストレス、不規則な食生活、遺伝などの環境因子によって歯周病になりやすい、あるいは進行が速い傾向になることがわかっています。喫煙はタバコに含まれる有害な化学物質がお口の中の免疫系を妨げてしまうと言われています。ストレスも慢性的なストレスが免疫系を弱めてしまい細菌と戦う力を弱めてしまいます。食生活についてはバランスの悪い食事が続くことで免疫力が弱くなり、歯周組織の健康に影響を与える可能性があります。遺伝的な要因も歯周病リスクを増加させる可能性があります。ご両親が若い時から入れ歯だった、歯周病の治療をしていたなど家族性の歯周病も歯周病の要因の一つです。

3、 歯周病治療って?

歯周病は慢性の炎症性疾患と言われるため、炎症をコントロールすることが歯周病の治療をしていく中でとても大事になります。そのための日々のセルフケアとプロフェッショナルケアがとても重要です。

●セルフケア

●セルフケア

毎日行うセルフケアは、歯周病の進行を抑制し、歯周組織の健康を維持するために重要です。簡単にセルフケアについてご紹介します。
適切な歯ブラシで正しい歯磨きを行う。歯ブラシを用いた歯の表面全体を磨くことは歯垢を取り除くために必要不可欠です。皆さん歯ブラシはご自分の歯に合ったものを使ってらっしゃいますか?効率よく歯茎などにダメージを与えない歯ブラシを歯科医院で処方してもらうこともとても大切です。フロスや歯間ブラシなどの補助器具を使用することも大切です。歯と歯の間の歯垢を取り除くための糸ようじ(フロス)や歯間ブラシは届きにくい歯垢の除去に有効です。
また、洗口液の使用も効果があります。朝起きた時に口の中がネバネバしたり臭いが気になるという方もいらっしゃると思います。そんなお口の中の細菌の増殖を抑制し、善玉菌を増やしてくれる助けをしてくれるのも洗口液(マウスウォッシュ)にはあります。洗口液はさまざまな種類があります。患者さまのお口に合った洗口液を選択し日々使用していただくことが大切です。

●プロフェッショナルケア

●プロフェッショナルケア

日々のセルフケアだけでは歯茎の中の深いポケットに付着した歯垢、歯石(歯垢が固く石のようになった状態)を取り除くことはできません。そのため、定期的な歯科医院でのケアが必要です。軽度の歯周炎では歯の根に付着した歯石を取り除くスケーリングや根の表面を滑沢にするルートプレーニング、歯の表面の汚れを専用のブラシで清掃するなどを徹底して行います。さらに中等度や重度の歯周炎になると歯周外科治療を行うこともあります。外科治療の一つにフラップ手術(歯肉剥離掻爬術)と言われる歯茎を切開し歯石などの細菌を除去すると同時に、炎症を起こした歯肉を掻爬する手術が行われます。当院ではなるべく患者さまの侵襲を避けるため、侵襲の低い外科治療をご提案させていただいております。詳しくは歯科衛生士や歯科医師にご質問ください。

まとめ

歯周病は炎症性疾患であり、生活習慣病です。歯を失う主たる原因の一つが歯周病です。歯周病は軽度であれば健康な状態を取り戻すことも可能です。しかし中等度や重度の歯周病になると外科治療や再生療法などの治療が必要になります。歯周病は誰でも罹る可能性のある病気で初期は無症状に進行することが多く気付いた時には進行してしまっていたという方も少なくありません。定期的な歯科医院での検査、プロフェッショナルケアと日々のセルフケアが重要です。また、歯周病はさまざまな要因が関連しています。その要因をしっかりと見つけ患者さま一人一人のリスク因子を出来るだけ減らす、取り除くことが大切です。歯周病なのでクリーニングをしましょうというのは時代遅れです。どのような状態で何が原因であるか把握し、しっかりと治療を行うことでご自身の歯を長く守ることが可能です。歯周病でお困りの方はぜひご相談ください。

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